中東の企業訪問レポート第二弾となる今回は中東初のローコストキャリア(Low-Cost Carrier、格安航空会社)であるエア・アラビア(Air Arabia)社についてレポートしていきます。
エア・アラビアの概要
エア・アラビアはアラブ首長国連邦(U.A.E)を構成するドバイやアブダビなど7つの首長国の1つであるシャルジャ首長国のシャルジャ国際空港を拠点として2003年に営業をスタートしています。(初フライトはバーレーン)
このシャルジャ国際空港を実際に見学した印象ですが、その前に見ていたドバイ国際空港と比べると規模も小さく、地味な印象を受けましたが、空港はエアアラビアの飛行機で埋め尽くされていて、エアアラビアのためにあるような空港という印象を受けました。実際エアアラビアはシャルジャ首長国政府の支援で設立された背景があり、現在もシャルジャ首長国政府関係の組織が数十%の株式を保有していて、半官半民の格安航空会社とも言えます。
エアアラビアは、現在21機のエアバスA320を所有して、中東をはじめ、北アフリカ、インド地域など44路線を運航しています。
これら同社が運航する路線はあるルールに沿って決められていて、それは拠点としているシャルジャ国際空港から片道のフライト時間が5時間以内というものです。
エア・アラビアの今後の展開
同社はこれまで本拠地であるシャルジャ空港を中心に路線拡大を図ってきましたが2009年には新たに北アフリカのモロッコを路線のハブとしました。これによって東アフリカ地域、ヨーロッパ地域、東ロシアなどのエリアもカバーするようになっています。
同社はさらに第3のハブ空港をエジプトに設けます。この第3のハブ拠点が出来ることでさらにカバーエリアを拡大して利便性の拡大を目指しています。
中東・アフリカ地域の特徴として鉄道網が発達していないということがあります。このため、中東・アフリカ地域地域での格安航空ビジネスは、この地域への出稼ぎ労働者や欧米からのビジネス客の需要が高いと金融機関のアナリストなどは分析しています。
これまで説明したようにエアアラビアはサービスエリアの拡大を図っています。これに伴い所有している航空機が足りない状況で2015年までに機体を100機に増やす計画を持っていて、07年にドバイで開催されたドバイエアショーでエアバスからA320を44機購入・リースする契約を発表しています。
このようにエリアの拡大、機体の拡充を進めているエアアラビアですが、07年7月17日にIPO(新規株式公開)を行いドバイ証券取引所(DFM)に株式の55%を上場し、約700億円を調達しています。
格安航空(LLC)の状況
さてエアアラビアが属す格安航空会社ですが、最近は日本のメディアでも耳にする機会が多くなりましたが世界的なシェアなどはどうなっているのでしょうか。
エアバス社やエアアラビア社が公表している資料によるとヨーロッパやアメリカなど欧米では約25%のシェアを格安航空会社が占めるとされています。
対してエアアラビア社が本拠を構える中東ではまだ約5%程度、アジアでは約10%程度のシェアしかありません。そのため今後の拡大余地はまだまだ大きいといえるのではないでしょうか。
実際エアアラビアを利用している乗客国の構成ですが、インドなどの西アジア地域が約50%、そして中東・湾岸諸国地域の乗客が約40%を占めています。
このような乗客構成ではありますが、エアアラビアは設立翌年の04年には黒字に転換し、その後は売上・利益を拡大しています。エアアラビアの収益の内訳でいうと約90%を航空券の販売で挙げており、ほぼ本業で稼いでいることがわかります。
エアアラビアは中東初の格安航空会社というブランド力を持っていますが、最近、ドバイに新たな格安航空会社が誕生・運航を開始しています。
この航空会社はフライドバイ(FlyDubai)という会社でドバイ首長国が支援をしています。
この新たなライバル誕生についてエアアラビアのIR担当にお話を伺ったところ、彼らはまだフライドバイをライバルだとは全然思っておらず、逆にフライドバイ側がエアアラビアを脅威に思っていると強気のコメントを貰いました。
実際、現在のところフライドバイの規模はまだまだエアアラビアには及ばないため、現地証券会社などでは、フライドバイの出現によって中東湾岸諸国における格安航空セクターの成長がさらに期待できるとしています。
3月末、日本の成田空港にUAEのドバイ、アブダビの航空会社であるエミレーツ航空とエティハド航空が直通便をそれぞれ開通しました。
これら2社のサービスはエコノミークラスでも日本語の映画を含む400以上の映画を見ることが出来ますし、無料で様々な物が乗客へ提供されるなどサービスが充実。
これら航空会社を使ってドバイやアブダビに行って、その後エアアラビアを使って中東諸国・アフリカを旅してみるなんてのも中々良いものではないでしょうか。