2010年10月下旬、私は香港中環にあるマンダリンオリエンタル ホテルへと向かいました。
その日マンダリンオリエンタル ホテルでは米競売会社大手のサザビーズが開催するワインオークションが行われことになっていて、私はその会場を見させてもらうために足を運びました。
酒税をゼロにする香港
香港のワインには従来80%という世界的にも高い酒税が課せられていました。これを2007年に40%、2008年2月にはついにアルコール度数30%以下の酒税をゼロにするという思い切った政策を実行に移しました。
この酒税のフリー化は、従来80%という非常に高い酒税を課していた香港に、かなりインパクトを与えたのではないかと思います。もちろんこの酒税のフリー化によって香港政府が受け取る税金は減ることになります。(年間5億6000万ドル程度の税収減と言われています)
しかし、香港貿易発展局の予測では、今後世界のワイン消費量の伸びが1%にとどまるなかにおいても、アジアでは毎年10%成長すると予測していて、17 年には消費量がアメリカを追い越すと見込んでいて、その経済効果は12年までに1億2800万米ドル以上、17年までに3億8400万米ドル以上におよぶ と想定されています。
これまでワイン市場は、ニューヨーク、ロンドンが取引の中心となってきましたが、ここに香港が加わる事になりそうです。既に09年にはワインオークションのオークションの成約高が世界第2位に躍り出たというニュースも出ています。
サザビーズのワインオークション会場
サザビーズのワインオークション会場となるマンダリンオリエンタルホテルに着き、会場を覗き込むと15卓ほどの丸テーブルがあり、既にオークションに参加するであろうと思われる人たちが座っていました。
参加者の顔ぶれや、話されている言葉を聞くと参加者の多くは中国人で、日本人の参加者も少しいらっしゃいました。
注目のワインオークション自体ですが、1ロット(12本)単位で競りが行われる形となっていて、落札すると、落札した値段でその後のロットの買う権利も発生する仕組みとなっています。
オークションを見学していると、多い人は一気に10〜20ロットも落札していく人も。そんな感じでオークションは凄いスピードでワインが落札さ れていき、朝10時から夕方までかかるはずのオークションが、先ほど述べたように中国人の大量買い占めもあってか僅か1時間半で全部のワインが落札され、 オークションは終了してしまいました。
サザビーズの広報担当者も”香港ワインオークション始まって以来の速さだと思います”と驚き、そして嬉しそうな表情を浮かべていました。
ワインオークションの様子
さて今回行われたサザビーズのワインオークションではビンテージワインの「シャトー・ラフィット1869年」3本が1本当たり過去最高値の23 万米ドル(約1900万円)で落札されたのですが、これは、サザビーズの予想価格の28倍に上るそうです。購入したのは電話でオークションに参加していた アジア系の人ということで3本とも購入したとのこと、まさに香港はアジア(特に中国)富裕層によるワインブームの一大拠点といったところでしょうか。
このワインオークションに参加していた日本のワイン投資第一人者(個人的に)の浅川夏樹さんが言うには、オークションで取引されるワイン価格は市場価格よりかなり高くなっているとのこと。
オークションはワインを買う場ではなく、売る場所と考えた方が良いようです。
そう考えると、アービトラージ的な発想でフランスなど別の場所でワインを仕入れ、オークションで売って差額を取るという事をビジネスとして行っている人もいるのかもしれません。
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