新興国=高成長=長期的な株価上昇 というシナリオは本当に成り立つのか?

12月6日付け日経新聞電子版の記事に

あなたの新興国株投資、本当に有利?

という興味深い記事があった。(日経新聞電子版は個別リンクを禁止しているのであえてリンクは貼っていません・・)

この記事は自分のように資産の多くをリスクが高い新興国株へ投資している個人投資家にとって色々と考えさせられる部分があります。

まず、この記事では

金融機関のセミナーなどで決まって示される「経済の高成長の持続=長期的な株高」という、新興国投資に関する分かりやすいストーリー(営業トーク)について疑問を投げかけています。

新興国への投資に興味があって、どこかしのセミナーに参加したことがあればこの「新興国=高成長=長期的な株価上昇」という話は聞いたことがあると思います。

記事の中では、

これまで株式投資の世界では「企業収益や株価の上昇は、長期的に見るとGDP(国内総生産)の成長にリンクしている」と、当たり前のように指摘されてきたことについて投信運用会社バンガードの検証結果を掲載している。

バンガードの検証では、名目GDP成長率,国民1人当たり実質GDP成長率、国民1人当たり実質企業収益の伸び率、株価益回りという統計データを用いて検証を行っている。

日経新聞-新興国平均成長率

検証結果は、1995年から2009年までの国民1人当たり実質GDP成長率は、新興国が3.5%で、米国(1.9%)を大きく上回るが、国民1人当たり実質企業収益の伸びを見ると、新興国は1.6%で、わずかに米国(1.7%)を下回っていると述べられている。

即ち、企業収益という観点から見れば、新興国の成長を先進国のアメリカの企業がその恩恵を受け、結果アメリカの株の方が上昇するということを言いたいのではないかと思う。

さらに、この記事では続いて次のように述べている。

「アメリカ企業の収益に占める海外の割合は、この30年の間にほぼ2倍に拡大している。新興国の成長の果実の一部は、新興国ではなく、先進国(米国)企業が享受したということだ。企業経営のグローバル化により、一国の経済成長率とその国の株価との関連性は従来より薄まっていると考えられる。」

アメリカ企業の収益海外比率

確かにアメリカの企業は新興国の成長の果実の一部を享受しているだろう。

それはアメリカに限らず、日本を含め世界中の企業がそうなのではないだろうか?

但し、ここで示された統計情報だけでは証明できない。

なぜなら、海外比率の中で、どの程度新興国から利益を叩き出しているかがわからないからだ。

逆に日本企業については海外の売り上げ比率に対して新興国でどの程度売り上げているというデータがある。

日本企業-新興国売り上げ比率

出典:榊原正幸/著  大学教授が考えた本気で「株」で一億円投資法 ダイヤモンド社

このデータを信じるとTDK,ローム,日本電産,村田製作所など電気部品関係の企業は殆どを新興国で売り上げていることになる。

逆にトヨタ、ソニー、キヤノンなどセットメーカはまだまだ新興国よりも先進国の比率が高いことがわかる。

問題はこれら新興国の売り上げ比率が高い企業の株は上がるのかということ。

新興国の売り上げ比率が高い上位4社の株価と日経平均株価を直近5年間で比較すると以下のようになる。

赤線が日経平均株価なので、いずれも日経平均株価よりアンダーパフォームしている。

新興国の売り上げ比率が高い企業の日経平均との比較チャート

さらにこれら企業は東証だけでなく、アメリカ市場にも上場をしているが、その差はどうなっているだろうか?

TDKを代表例として載せたが、アメリカ市場の方がここ2年東証よりも上昇している。(アービトラージできるか?)

TDK比較チャート

チャート:Bloomberg

数社だけでのデータではなんとも言えないが、個人的な主張としては、結局証券取引所にお金が集まるようにしなければ、個別の企業の新興国での売り上げ比率がいくら高かろうが、株価には反映されないのではないかということ。

そういう面で言えば、新興国の証券取引所は、香港などを除いてまだまだ規模が小さいが、ASEAN・東南アジア証券取引所や、西アフリカ証券取引所などいくつかの国の企業を纏めて投資できる環境が出来ているし、作ろうとしている。

統一の証券取引所があれば、そこを利用した方が投資家は便利な訳で、お金はそこに向かう、その結果株価が上がるのではないか。

さらに、金融機関の営業トークのように「新興国=高成長=長期的な株価上昇」というフレーズは多くの人の心理を動かし、新興国へお金が向かわされることになり結局新興国の株が上がるのではないだろうか。

現に、日本の投資信託の売り上げランキングを見ればその傾向が一目瞭然である。

以上、日経の記事をきっかけに色々と考えてみました。

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